「黙ってないで、何か言えよ」
静かに私を追い詰めてくる、星野くんの低い声。
ひとことでも「何か」言わない限り、彼は私をこの場から解放してはくれないのだろう。
「返信とか、どうでもいいかなーって思ったから」
「何?よく聞こえないんだけど」
反感を買うのがわかっていてわざと口にした言葉に、星野くんが低い声で返してくる。
「だから、どうでもいいかなーって」
もう一度小さくつぶやくと、星野くんが私の肩をつかんで引っ張った。
強制的に振り向かされた私と、二、三段下に立つ星野くんの視線が同じ高さで交わる。
静かな怒りに揺れる星野くんの双眼が、真っ直ぐに私を見据えていた。
「訳わかんないんだけど。ケンカ売ってんの?」
星野くんを怒らせたいわけでも、ケンカしたいわけでもない。
だけど、私はまだ『あのこと』とうまく向き合う自信がない。
「ごめん、離して」
肩に載せられた星野くんの手を、押し除けて振り払う。