「ナルのほうが私より成績が良かったから、プライドが許さなかったのかも」

あのときのナルの目を思い出しながら苦く笑うと、私の話を黙って聞いていた星野くんが複雑そうに顔を歪めた。


「でもそれ、深谷のせいじゃないよな」

「そうだね、直接的には。でも、受験しない周りの子たちが自由に遊んでるなか、自分は塾と勉強漬けの毎日でストレスも溜まってたんだと思う。それに、ナルは成績がよかったから、親の過度な期待っとか、プレッシャーとか、そういうので疲れてたのかも。私もそうだったし。だけど、そうだったとしても、星野くんにしたことは絶対よくない。ごめんなさい……」

「いや、深谷が謝ることじゃないよ」

「でもナルが私にムカついてやったのなら、間接的に私にも責任があるから」

「いや、ないだろ。全然」

星野くんが強く否定してくれたことが、ちょっと嬉しかった。


「ありがとう」

薄く微笑みかけると、星野くんが困ったように私から視線を逸らす。

今日の星野くんは、なんだかいつもより特別に優しい。

その横顔を見つめながら、やっぱり私は彼のことが好きだと思った。

彼がどう思っているかは別として。