色々考えた。堂々巡りの頭を抱え、それでも考え抜いた。

ともかく、前向きになろう。
先輩に嫌われてしまったことは自業自得。挽回の手立てを探しても駄目だ。
それならもう一度好きになってもらうしかない。

我ながらめちゃくちゃな案だとわかってる。榛名先輩みたいなイケメンを容姿で虜にできるとは思っていない。だから、愚直に仕事を頑張ろう。
先輩が後輩として私を認めてくれるように努力しよう。独り立ちさせた私を見て、『あいつを一人前にしたのは俺だ』と誇りに思ってもらえるように結果を出そう。

仕事でしか繋がれないなら、それでいい。恋愛感情でなくていいから、もう一度、私に笑顔を向けてほしい。
償いになるかわからないけれど、彼を傷つけた罪をこんな形で贖いたい。

私は猛烈に仕事をした。できることはなんでもやったし、他班の手伝いも積極的に参加した。もともと、補充要員を務めることが多い立場だ。どんな状況でも自分の経験になるならと取り組んだ。

忙しくしているのは精神衛生上いい。余計なことを考えなくて済む。
私は榛名先輩の姿を帰り道で探さないようにし、メッセージが来るのを待たないことにした。相変わらず職場では先輩後輩の関係を維持している。余計なことは喋らず、指導のみ。その指導も最近はほとんど入らなくなった。

別れからひと月が経つ頃、私はとうとう大きな仕事をひとつ、自分の力だけでクリアした。
私が営業をかけ仕事を取り、自身で複数の班に協力要請をし、外注に出し、案件を完結させた。
金額面的に大きかったこともあり、課長も二課の面々も祝福してくれた。