「あの…マオットはどこなの?このレストランにいるんでしょう?」


するとその時。大荷物を抱えたルキが店の奥から現れた。彼女は寝袋に入れられた恋人の姿に絶句しているようだが無理もない。

カウンターの隣に腰掛けた私は、彼女の目の前にあるものを置いた。薄い冊子はアルバムだ。


「これが、あなたの言っていた証拠なの…?」

「はい。中を見れば、すぐにわかると思います」


表情が硬い彼女は、表紙をひらくことをためらっていたが、勇気づけるように肩に手を置くと、やがて静かにページをめくる。

そこに映っていたのは、懸命に働くマオットさんの姿だった。

飲食店のホール、清掃業者、日雇いのイベントスタッフ。彼は、本業である経理の事務職から街角での靴磨きに至るまで様々な職種を掛け持ちしていたのだ。

疲労を隠しながら笑顔で勤務にあたる姿に心打たれたようなメディさん。いまだに信じられない様子の彼女を見て、ルキは言った。


「写真は合成なんかじゃない。過去の世界でミレーナが撮ったものだ。その男は、お前以外の女には目もくれなかったぞ」