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「出会い頭にみっともない所を見せて悪いね。改めて、私がマクだ。よろしく頼むよ」


二脚しかない椅子にルキと並んで座る。

本棚が所狭しと並ぶ部屋で、眼帯の男性が微笑を浮かべた。カウンターキッチンに寄りかかる青年も明るい声で続ける。


「俺はラウガー。マクの同居人です。よろしくねぇ」

「よろしくお願いします…!あの、体は大丈夫なんですか?」

「平気平気!俺、ゾンビだから何回焼かれても死なないの。だからマクと暮らせてるようなもんだし」


ニコニコとする彼は、業火で包まれたことをまったく気にしていないらしい。肌も再生しているようで、腐敗した体を持っているイメージだったゾンビにしては綺麗である。


「ところで、今日は一体なんの用?ルキがわざわざ人間の娘を連れてくるなんて予想もしていなかったよ」


そう尋ねたマクさんに事情を説明したルキ。

黙って話を聞いていた彼は、状況を理解すると、隣の部屋へ招いた。連れられて中へ入ると、綺麗な竪琴が視界に映る。


「これは?」

「私の大切な楽器さ。この音色を聴いて夢の中に落ちれば、過去の世界に飛ぶことができる」


興味深く尋ねた私に、竪琴を見せながら説明してくれたマクさん。ウッドチェアに腰掛けた彼は流れるように弦に手をかけた。


「長話は無用だ。本体が起きるまでは過去にいられるから、自由に調査をしてくるといい。ただし、チンタラしている間にラウガーが何かをやらかしたら、この家ごとケシ炭になるから覚えておくように」

「えっ!?そ、それは困ります…!」

「はは。それじゃあ、素早く用を済ませて帰ってくることだな」


オルゴールのような音が奏でられ、部屋の空気が一瞬で変わった。マクさんの魔力に包まれ、耳栓をしたラウガーさんの「怒らせないように善処しま〜す」という声がだんだん遠のいていく。

そして、数分後。

私はルキに寄りかかるように深い夢へと落ちていったのだった。