気分を切り替えた私は、余裕を持って辺りを見回した。
お洒落なカフェに並ぶ人々の客層は若い。男女比はどちらかというと女性が多く、カップルも目立った。そして、メニューはフルーツをふんだんに使った、いかにも“映え”なものばかりだ。
やはり、繁盛するためには目を惹く盛り付けや可愛いフォルムが重要なのだろう。
一時間程並ぶと、やっと店内に通された。
そこは白を基調とした清潔感のあるテーブルが並んでおり、団体席よりはふたり掛けが多い印象だった。カフェはレストランよりも女子会やデートの比率が高いようだ。
《レクエルド》に反映するなら、テラス席を作ってみるのが良いかもしれない。ルキに頼めば、ゴーレムやサイクロプスが最速で工事をしてくれるのが強みである。
「ミレーナ。注文は決めたか?」
「はい。私は一番人気のパンケーキにしようと思います」
「そうか。じゃあ、俺はこのケーキセットにしよう」
トンと長い指が差した先には、可愛らしい動物を模したカップケーキとコーヒーの写真がある。
「そういえば、ルキは人間界の食べ物が口に合わないって言ってませんでしたか?それが原因で倒れてライアスさんと出会ったんでしょう?」
「あぁ。だが、三年も居ればだいぶ慣れた。それに、今日は味の研究も目的のひとつだからな。お前だけに任せるわけにはいかないだろ」