近くにいた女性のふたり組に話しかけるルキ。頬を染めた彼女達と、何やら話しているらしい。
驚いて見ていると、やがてチラシを持ってこちらへ歩み寄ってきた。
「待っている間にメニューを決められるらしい。このやり方は使えるな。ウチも繁盛したら採用しよう」
手をとって歩き出し、素直に最後尾に並ぶ彼に思わず尋ねる。
「すごく待ち時間が長そうですが、平気ですか?」
「何か困ることがあるのか?」
「あ、いえ。私が行きたいといったお店で、付き添いのルキを待たせてしまうのが申し訳なくて。時間帯とかを色々考えて案内すればよかったなって」
すると、頭の上にトンとメニューが乗せられた。軽く小突くような仕草に顔を上げると、穏やかな藍色の瞳と目が合う。
「そんなこと気にするな。俺は自分の意思でお前について来たんだ。それに、店内の接客が学べないのなら、並んでいる間にメニューや待ち時間の工夫を見ればいいだろう」
目からウロコの発言。
ルキは素直に行列に並んでくれる。長い待ち時間でも文句を言わない。
またひとつ、魔王とは程遠い彼の一面を知った。