「行く店は決まっているのか?」

「はい。昨日のうちに目星をつけておきました。グルメ雑誌に載っていた有名店をいくつかまわろうと思いまして」


《レクエルド》と似たような雰囲気のレストランや、若者に人気のカフェ、ゆっくりとお茶会を楽しめそうな喫茶店など候補は様々だ。

まずは、口コミでも評判が良いカフェを目指す。

今日は出来る限り色んなお店を見て、人気メニューや接客を学ぶんだ。お客さんの需要が何なのか漏らさずリサーチしなくては。


しかし、気合十分で目当ての店にたどり着いた瞬間、私は思わず目を見開いた。

店の前は大行列。予想以上の混み具合に開いた口が塞がらない。おそらく、店に入るまでに相当待つことになるだろう。

ルキ、人混みの中で並ぶの苦手そうだな。時間は限られているし、このカフェは諦めて違う店舗に向かった方がいいかもしれない。

でも、雑誌に載るくらいの有名店なら入ってみたいな。

と、ぐるぐる考え込んでいたその時だった。


「すまない。最後尾はここでいいのか?」