「た、大変だっ!大変だよミレーナ!!」
その時、テーブル席でパソコンをいじっていたケットが大きな声を上げた。
急いで駆け寄ると、ケットはパソコンの画面に釘付けだ。
「どうしたんだい?そんなに慌てて」
「何かあったの?」
ずいっ!と見せられるパソコン画面。
ケットは目を輝かせながら口を開く。
「見てよ、これ!昨日サイトにあげた宣伝が、何故かわからないけど、すんごい勢いで拡散されてるんだ」
“これ”?
ヴァルトさんとともに覗き込む私。
すると目に飛び込んできたのは、魔界のベンチに腰掛けるルキの写真だった。
『魔界レストラン《レクエルド》、ついに明日オープン!
美味しい料理を用意して、魔界の住人達がお客さまをお出迎えいたします。都市からの直通列車に乗って、どうぞお越しください。
店主の魔王様も、皆様のお越しをお待ちしています』
そんな宣伝文に添付された写真には覚えがある。
初めて魔界に行った日に、私の写真撮影が終わるのを待ってくれていたルキをこっそり撮ったものだ。
通知を見た瞬間、声が裏返る。
「さっ、3万スマイルに1万メガホン!?しかもコメントが800件って!!」
前世でも経験したことがない拡散ぶりに、動揺が止まらない。1万メガホンということは、1万人のユーザーが拡散してくれたということだ。しかもこのスマイルの付き具合。レストランの宣伝を目にした人は数えきれないだろう。