この日を機に、《レクエルド》は着々と開店準備を進め始めた。

アクセスの悪さを解消したのは、ルキが魔界から運び込ませた“幽霊機関車”。元々ある線路に増設し、都市からの直通ルートを作ったのだ。ゴーレムやサイクロプスなどの建設員が来た時はさすがに腰を抜かした。

車掌はムジナと呼ばれるタヌキに似た動物で、ケット同様人語を操れる魔物らしい。


「お嬢さんがミレーナさんですか?ルキ様から話は聞いています。これからは、私が責任を持ってお客さんを連れてきますね!我が幽霊機関車は超特急なので、都市からたったの二十分で移動できますよ」


爽やかな好青年の姿に化けて、“二十分”に合わせてピースを向けてくるムジナ。機関操縦士の制服を着こなし、やる気マンマンらしい。

躊躇しながら、こんな勝手なことをしていいのかとルキに尋ねると「勝手に町をダムに沈めようとしているのは向こうだ」などと強気な発言が返ってくる。

さすが魔王様。ここは大人しく、ラッキーと受け止めるしかない。