「嘘ぉっ!やったー!」
飛び上がったのはケットだ。
あまりの衝撃に猫の姿に戻ったものの、レティさんはすぐに受け入れて、楽しそうに笑っていた。
談笑が続く中、皿を下げたヴァルトさんにこっそり耳打ちする。
「こんなに美味しい料理がつくれるのに、もう舌が鈍ったなんて言いませんよね?」
「君には敵わないな」
晴れやかにそう答えた彼。
ついに、レストランにシェフが揃った。これでやっとスタートラインに立てたのだ。
「それにしても、遊びで撮った写真を手がかりに、俺と彼女を引き合わせるとは思わなかったよ」
ぽつりと聞こえた呟きに、彼を見上げる。
レベッカさんが、かつて常連の仲間たちと並んで撮ったセピアな写真を大事にとっていなかったら、レティさんをここに連れてくることはできなかったかもしれない。
「ヴァルトさん。カメラは過去の思い出を縁取って永遠にすることができる素晴らしいものなんですよ」
「ふふっ。たしかにそうだね」