その場にいた全員が目を見開いた。誰もが予想しなかった言葉に、開いた口が塞がらないようだ。

しかし、魔王様だけは小さく吹き出し、肩を揺らす。


「あっはっは!人間の小娘が国を相手取り、タンカをきるとは。お前が店主にでもなるつもりか?」


初めて見た笑顔。

クールで近寄りがたいと思っていた彼の素の表情につい釘付けになる。さすが王というべきか、高らかに笑う姿にも品がある。


「店主なんて、そんなおこがましいことでは…強いて言えばマネジメントでしょうか」


こちらを覗き込む綺麗な顔に大きく頷いて見せると、彼は興味を惹かれたようだ。

階段を転げ落ちるようにどんどん進んでいく話に、役人達はついていけない様子である。


「そんなこと出来るわけがない…!あんなおんぼろレストランが、たった半年で有名店になるわけないだろう!」


声を上げたものの、魔王様に睨まれて怯む役人。

私は勢いのまま畳み掛ける。


「有言実行ができたら、ダム建設は白紙にしてください」


その懇願に渋る彼ら。

トドメを刺したのは魔王様だった。

剣を砕いた手から滴る血を艶やかに舐めた彼は、ドスのきいた声で低く告げる。


「何か文句があるなら、今ここでお前らを食ってやってもいいんだが…」

「ひぃっ!わ、わかった。わかったよ。ただし、期間は半年だ。それ以上は待たないからな!」