写真を見つめる彼の藍色の瞳は、どこまでも澄んでいて優しい。


「俺を店に引き入れたライアスは、閉店後にもかかわらず料理を作ってくれた。それも、人間界の味を受け付けなかった俺に合わせて、特別なスープを用意してくれたんだ」

「もしかして、昨日のスープですか?」

「あぁ。俺はあのスープしか知らないが、初めてまともに食事ができた。ライアスは俺の恩人なんだ。…この写真をみて、あいつと約束をした日の記憶が蘇った」


写真は、過去の思い出を収納する特別なものだ。

アルバムを見返せば一瞬で過去に立ち返り、当時の思い出や気持ちが溢れ出す。

きっと魔王様は、三年前に倒れた時に見上げたレストランとこの写真を重ね、改めて主人との誓いを心に刻んだのだろう。

しかし、感慨深い気持ちで魔王様を見つめていると、彼はさらりと言葉を続ける。


「だから、ライアスの願いを聞き届けるために役人どもを早急に始末しようと思ってな。店を出たら、偶然お前が絡まれているところに出くわしたわけだ」

「どうしてすぐ物騒な方へいってしまうんです!?」