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「とてもお世話になっちゃったわ。ありがとう」

「ううん。僕、ミレーナと会えてよかった。またいつでも来てよ」


レストランの店先。

穏やかな日の光を浴び、コートを羽織った。見送りに来たケットは少し離れ難そうにしている。


「駅まで送るよ。列車が来るまで一緒にお話しよう?」

「ありがとう。でも大丈夫よ。魔王様がいるでしょう?朝ごはんを用意して待っていてあげて」

「えぇ…、いいよぉ。ご主人様は夜行性だから朝起きてこないし、ミレーナといるの楽しいから」


素直で純粋な少年だと思っていたが、やはり多少は猫っぽい性格をしているようだ。自由気ままで気まぐれな一面もあるらしい。

しかし、わざわざ見送りをさせるのも申し訳ない。駅までの道に迷うこともなさそうなので、一緒にいたいの一点張りのケットをなんとかなだめる。

やがて、口を尖らせつつも納得した彼にくすりと笑った私は、一枚の写真を差し出した。その裏には“ありがとうございました”とメッセージを添えてある。


「わぁ!これ、昨日の夜に撮ってたレストランの写真だ。もらってもいいの?」

「うん。一晩の宿を貸してくれたお礼に。魔王様に渡してくれる?」

「わかった。ありがとうミレーナ」