「どうする記者さん。反撃の手はあるのかい?まさか、裁判で訴えるとか?」
パソコンを開いたひとつのテーブルを囲み、相談を始める。
ヴァルトさんの問いに、グレンダさんは店のパソコンをカタカタと操作しながら答えた。
「いいえ。今から裁判を起こすのは現実的ではありません。町が取り壊されるまでに判決がでないでしょうし、後ろ盾がない状態で国を相手取るのは負け戦です」
「それなら、一体どうすれば…」
「簡単な話です。メディアには、メディアで勝負するのが一番。記者会見を開いて、この記事が捏造だということを訴えましょう。あれだけインターネットが荒れて注目されているなら、きっと多くの人が見てくれるはずです」
グレンダさんは「ちょうど、噂の発端となった写真に関わる人たちが揃っているみたいですし」と人間の協力者を眺めた。
確かに、ここに集まった人々が記事の矛盾点を証言すれば世論を変えられるかもしれない。
しかし、公に会見を開くとすれば、懸念すべきことがあった。
ルートは分からないものの、写真が撮られている以上、記事に対する国民の信用度は高いだろう。
会見は“魔物は危害を加える存在ではない”と伝えるためのもの。つまり、魔物であることは認める必要があるのだ。