事情がわからずに困惑する私とメディさんは、静かに涙を流し続ける少年を放っておけず、レストランに連れ帰ることにした。

従業員達に出迎えられた後、とりあえず、寒空の下を飛び回っていた彼の体を毛布やタオルで巻いて温める。しもやけで耳や指の先が真っ赤な姿は痛々しい。

ケットとリム君はもともと友人だったようで、猫の姿のケットを見ると、死神の少年はひしと抱きしめた。

そして、やがて流れる涙が止まった頃。少年は深々と頭を下げる。


「ごめんなさい。迷惑をかけちゃった」

「いいのよ。よければ、理由を教えてくれないかな…?死神失格だなんて思うのはどうしてなの?」


小さい子どもの相手をするような口調で尋ねた私。

すると、少年は毛布を掴んで静かに語りだす。


「僕はペルグレッド国の管轄を任されている死神なんだ。人間の寿命が本部から通知されて、ちゃんと生まれ変われるように狩りにいく。それがおしごと」


リム君の話では、死神はあらゆる時代、あらゆる世界に存在しており、その一人ひとりが管轄を割り当てられて、死神本部からの指令に従って人間の魂を狩っているようだ。

どうやら、私を異世界に転生させたのは彼とは別の死神らしい。


「三日前、いつものようにおしごとの手紙が届いて、僕はエスターという名前の女の子を狩りに行ったんだ。…でも、僕は大鎌を振れなかった」