まばたきの間に、一瞬で目の前に舞い降りる少年。
大鎌を背負った黒装束に、目を惹く銀色の髪と翠色の瞳。その顔立ちは幼く、中学生くらいに見えた。少年と言われているのが納得だが、おそらくはるかに年上なのだろう。
「お仕事中に呼び止めてごめんなさいね、リム君」
「ううん。だいじょうぶ。久しぶりだね」
中性的な声。可愛らしい大きな瞳が私を映す。
「誰…?メディさんのともだち?」
「あっ、初めまして。ミレーナと言います。リム君ですよね…?あなたにお願いしたいことがあって、会いに来ました」
「おねがい?」
無表情のまま首を傾げる彼に、頭を下げながら続ける。
「私達の働いているレストランのクリスマスイベントのために、死神の力を貸していただきたいんです」
「僕の力を?」
「はい。空を自由に飛べるあなたの協力が必要なんです」
立ち退きのことやイベントの企画を事細かに説明すると、リム君は納得してくれたらしい。
しかし、彼の表情は無のままだ。
「うぅん。力になりたいけど…僕、いまそれどころじゃなくて…」
その時、ぽろりと溢れた涙。
表情を変えずにぽろぽろ泣く彼に、思わずぎょっ!とする。
「どうしたの?どこか痛い?」
わずかに首を横に振るリム君は、くすん、と鼻水をすすって小さく呟いた。
「僕、死神失格なんだ。おねえさんの力にはなれない」