「どこかへ行くのか?」
「はい。メディさんと一緒に、クリスマスのイベントに向けて死神の少年をスカウトしに行くところです」
クリスマスのイベントについての詳しい企画を知らない彼は首を傾げている。
「死神にどう協力させるのか想像はつかないが、頼みがあれば言え」
「ありがとうございます。できれば、クリスマスまでに大きなモミの木を手配してくださると助かります」
頷くルキは、そっと私の目線まで屈んで髪に触れた。
不意打ちの仕草に顔が熱くなる。
「暗くなる前に帰ってこい。何かあれば迎えにいく」
なんだ、この甘やかし方。
魔界に連れ去られた一件もあり、目の届かないところにいくことが心配なのだろうか。
ルキは今までこんな風に言ったことはなかった。あの夜から確実に何かが変わった気がする。それとも、私がルキを好きだと気付いたから変に意識してしまうだけ?
「わ、わかりました!行きましょう、メディさん!」
マフラーを巻いて、そそくさと店を出た。
まだ心臓がバクバクと音を立てている。
こんなに免疫なかったっけ?前世ではそれなりに人を好きになって付き合った経験もあるが、なんせひとり旅が趣味だったこともあり、恋愛に慣れているわけではない。
まさか、異世界に転生してまで恋煩いに振り回されるなんて思わなかった。
こうして、幽霊機関車に乗った後も落ち着かず、メディさんは何かを察したように口角を上げていたのだった。