単にクリスマスツリーを運び込み、電球を灯してイルミネーションに凝っただけでは、同じ取り組みをする都市の店には負けてしまうだろう。

そこで私は考えた。本当に空を飛べるサンタさんがソリを引いて現れたら面白いんじゃないかと。

まさに、タネも仕掛けもない、歴史に残る浮遊マジックだ。


「あの、お知り合いに空を飛べる魔物はいませんか?できれば、協力をしていただきたいのですが」


顔を見合わせた従業員達は記憶を辿るように考え込む。

すると、「そうだ」と呟いたヴァルトさんがメディさんとケットに話しかけた。


「彼なんかいいんじゃない?あの死神の男の子」

「あぁ、リム君ね。たしかにふわふわと空を飛んでいるわ」

「リムは人間界でお仕事してるし、頼めばやってくれるかも!」


口々にそう言って表情を明るくする三人は、共通の人物を思い浮かべたらしい。そんなに名前が知れているなんて、有名な魔物なのだろうか。

私は、ヴァルトさんにおずおずと尋ねる。


「あの、“リム君”って?」

「ペルグレッドの人間の魂を狩っている死神の少年さ」

「た、魂を狩る!?」

「はは。狩るといっても、寿命がきた人をお迎えにいくだけだから悪い子じゃないよ。大鎌で切られた魂は、無事にあの世へと向かって次の命に生まれ変わることができるんだ」