写真をアップロードした時、店内の暖炉の前で丸くなっているケットが視界に入った。猫らしい姿に表情を緩めていると、どこか浮かない顔をした彼はぽつりと呟く。


「明日から十二月ってことは、約束の半年後まであと一ヶ月ってことだよね。…早いなぁ」


この町がダムに沈められるまで、残された時間は少ない。刻一刻と近づいてくるタイムリミットに、ゴクリと喉が鳴った。

あと一ヶ月で、《レクエルド》を国で一番の有名店にしなければ。

だが、私は集客面以外に懸念があった。

“国で一番の有名店”とは、何を基準に判断できるのだろう。ダム建設を白紙にさせるには、それなりの支持と世論が必要だ。来客数で判断するなら、やはり半年で都市の有名店に追いつくのは厳しい。

つまり、この店の存続理由になりうる説得材料を、目に見える形で用意しなければならないのである。


「ミレーナちゃん、深呼吸して?そんなに眉間にシワを寄せたら、可愛い顔が台無しだよ」


カウンターから顔を出したのは、バックヤードの整理を終えたヴァルトさんだった。


「期限まではまだ時間があるでしょう?クリスマスも控えているし、ハロウィンの時のようにイベントを企画したらどうだい?きっと、たくさんのお客さんの笑顔が見れるよ」