ルキはいつだって誠実だった。自分の気持ちをはっきり口にする分、他人を怖がらせたりすることも多かった。

素直じゃなくて優しさが伝わらないこともあったけど、彼はいつも誰かのために動いてくれる。

棺桶で泣いたあの時。無意識に名前を呼んだのは、きっと偶然じゃない。会いたかったんだ。ルキなら絶対に見つけだしてくれると心のどこかで信じていた。


「ミレーナ。落ち着いて答えて欲しいんだが、ゴブリンの他に怪しいやつは見なかったか?」

「怪しいやつですか?」

「あぁ。ゴブリンの生息地はここよりはるかに南なんだ。軽いイタズラ程度でここまで来るとは思えなくてな」


必死に記憶を探るが、心当たりはない。私を眠らせたのも運んだのも、みんなゴブリンだった。棺桶に入れられている間は足音や話し声もしなかったし、第三者がいたわけではないだろう。

その時、蓋が閉まる間際に見た光景が脳裏によぎる。


「そういえば、糸のようなものが見えました」

「糸?」

「はい。気が動転していたので見間違いかもしれませんが…」