その瞬間、衝撃が走った。
嫌な胸騒ぎとともにテラス席を見ると、例のグルメ雑誌を片手にケットと話している青年が目に映る。
で、でた!間違いない!シグレだ…!!
すらりと高い背に、鍛え上げられた体つき。茶色の短髪とレモン色の瞳は、紛れもなく世話焼きな幼なじみだった。
どうしてここが?特集記事の写真には姿が映り込まないように配慮したし、ニコッターにも私の存在は少しもほのめかしていないのに。
慌てて背を向け、額に滲む汗を拭く。
「違いますメディさん、あれは幼なじみなんです。しかも、この上なく厄介な」
「どういうこと?」
「私がここで働いているとバレたら、地元に連れ戻されます!」
その焦りようにただならぬ事態だと察したメディさん。
すると、あろうことか、ケットに連れられたシグレが店内に向かってくるのが見える。バックヤードに逃げ込む時間はなかった。
「ルキ、すみません!かくまってください!」
「は?」
返事も聞かず、勢いよく彼のマントの中へ飛び込んだ。身を隠すと同時に聞き慣れた青年の声が耳に届く。
「あの、あなたがこのレストランのオーナーですか?」