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ついにやってきたハロウィンイベント当日。レストランの外にテーブルを設置したガーデンパーティースタイルのスイーツビュッフェは大盛況で、賑わいをみせている。
ヴァルトさんが今日だけは日中も頑張ると申し出てくれたことで、メイン料理もバイキング形式で楽しめるように準備をした。もちろん、割引になるため仮装をしてくる人も多く、ハロウィン一色だ。
窓から外を眺めた私は、カウンターに寄りかかるヴァルトさんに声をかける。
「リアルな仮装をする人も多くて面白いですね。こんなに盛りあがるとは思いませんでした」
「ふふ。これじゃあ本物の魔物が混じっていてもわからないね」
冗談まじりに言われたが、今日は間違えてケットが耳や尻尾を出してしまってもごまかせそうだ。さすがに、メディさんが帽子の隙間から蛇を覗かせたら驚かれるだろうけど。
「今日は外の席しか開放していないんだな」
バックヤードからルキの声が聞こえ、振り向きながら答える。
「そうなんです。外のテーブルから料理をとって戻るよりはテラス席で食べていただいた方がいいと思って、ちゃんと日除け用のパラソルやテントも準備して…」
と、彼の姿が視界に映った瞬間。思わず言葉を止めた。
きらびやかな装飾が施されたネイビーのベストに、豪華な黒いマント。貴公子のような気品にあふれた服装に見惚れる。
「ルキ、その格好は…?」
「今日はハロウィンだからな。店主自らが仮装をした方が盛り上がると思って城から持ってきた式典用の正装だ。いいだろう?」