現在、ルキが《レクエルド》の店主をやっている以上、魔界の政治はキーラさんが取りまとめるしかない。
ヴァルトさんをスカウトした時もそうだったが、ルキは度々政治戦略や今後の舵取りなどについて助言をしているようだった。
「僕としては、やはり武力で応戦するしかないと考えています。グールの生息する森の一部を焼きはらうか、見せしめとして数匹捕らえるのもいいでしょう。それか、罪人を生贄にして奴らの動きを操るのも案のひとつです」
「確かに、話ができないのなら、その方法もなかなか有効だろうな」
なんだ、この物騒な会話は。とても久しぶりに顔を合わせた兄弟の交わすものとは思えない。
それに、第一印象があんなに爽やかだった弟くんも、紛れもなくルキと同じ血を分けた悪魔なのだと実感する。
そんなふたりの様子を側で見守るアラク大臣は黙り込んでいた。
ルキは小さく息を吐く。
「お前の考えはわかった。…だが、今回はグールの生息する森の国境付近に柵を建て、侵入を防ぐだけで十分だろう。設置だけなら三日もかからない」
キーラさんとアラク大臣が大きく目を見開いた。戸惑うようなキーラさんの声が耳に届く。
「柵ですか?それだけ…?」
「あぁ。奴らは柵を登ろうと考える頭もない。それに、民衆を束ねる者として、力でモノを言わせるやり方は改めた方がいいだろうな」
ルキが軽く私の肩を抱いた。
表情ひとつ変えずに凛として続ける。
「平和的な解決もあることを、俺はミレーナから教わった」