「深い傷...。」
真っ直ぐで力強いあの瞳からは、そんなもの微塵も感じられなかった。
...いや、誰にも悟られないように隠しているのか。
それでいてあんなに気丈に振る舞う。
すごいな。
過去から逃げ続けている俺とは大違いだ。
「セシル。今すぐリオを信じろとは言わん。ゆっくりと時間をかけて、関わってみなさい。きっと何か変わるはずだ。」
「分かりました...。」
厳格な父上にここまで言わせるとは。
あの女は一体何者なんだ?
分からない事が多すぎる。
しかし、考えたところで分かるはずもないため、俺はもうひとつの疑問を問うた。
なぜ特殊護衛団に女がいるのか。
すると父上は楽しそうに笑い、こう言った。
「見れば分かる。」
...結局この日、俺の疑問は何一つとして解消されなかった。