side.セシル
留学から帰って来て数日が経ったある日。
溜まりに溜まった、王子としての職務を自室で片付けていた時のことだった。
「特殊護衛団所属の騎士、リオと申します!」
華奢な体に、艶のある琥珀色の長い髪。
突然現れた、騎士という言葉が似合わないほど美しいこの女は、強い瞳で俺を見つめて 胸元のエンブレムに拳をおいた。
特殊護衛団は、王国屈指の猛者だけが所属することを許される特別な組織だ。
まさか女が所属しているとは知りもしなかった。
それにこの細腕....この女が騎士として戦えるとは到底思えない。
きっと、特殊護衛団に所属するほどの特別な理由があるのだろう。
しかしこの女の両親は本当に納得しているのか?
特殊護衛団なんて、命がいくつあっても足りない仕事だ。
これだけ見た目が良いのなら貴族からの縁談も数え切れないほどあると思うが....。
そこまで考えて、俺はフッと思考をやめた。
俺には関係ない、どうでもいい話だ。
他人になんて興味が無い。
きっともう関わることはないだろう。
そう結論づけ、俺は女に要件を問う。
しかし女の発言は耳を疑うものだった。
「本日より、王子様の専属護衛騎士を務めさせていただくことになりました。よろしくお願いします。」