その日の夜。


なかなか寝付けなかった私は、特殊護衛団の訓練所で武器の手入れをすることにした。


真っ暗闇の中、持ってきた小さなランプの明かりだけがぼんやりと辺りを照らしている。


その中で、完全に寝巻き姿で双剣を磨く女が1人。


なかなか変な光景だ。


こうしていると、セルジオン王家に仕える前の地獄のような日々を思い出してしまう。


...誰にも言えないひどい過去。


考えるのをやめようと、私は大きく深呼吸をひとつ。



「...リオか?こんな時間に何をしている。」



突然聞こえた声の方に視線を向けると、そこには自主訓練終わりのルーカスさんの姿があった。



「なんだか眠れなくて。気分転換に武器の手入れをしていました。」


「そんな格好で...風邪引くぞ。」



言いながら、ルーカスさんは自分が着ていた羽織りを私の肩に掛けて 隣に腰を下ろす。



「ありがとうございます。」



ぶっきらぼうなくせに優しいんだから。


ルーカスさんの温もりが、思い出しかけていた嫌な過去を少しずつ溶かしてくれるのが嬉しかった。