「うん,分かってるよ」
 俺は頷いた。
 瑠花はそんなに強くないと俺は分かっていた。周りの人間に心配をかけたくなくて(俺はいくらでも心配をかけてもらって構わなかったが),必死に強がってつっぱっていたのだと。
「死ぬのが怖くない人間なんかいないよ。それは誰にだってある,当たり前の感情だから。そんなことで,自分を責める必要なんかない」
「……うん」
「でもさ,森嶋は強いよ。なんていうか,心が」
「えっ?」
 俺が瑠花に感心してそう言うと,瑠花は大きな目をまん丸くした。
 俺の言ったことは,矛盾(むじゅん)しているかもしれない。でも,していないかもしれない。――言った俺自身,どちらだか分からなかった。
「まだ十七,八で余命宣告なんかされたら,ショック受けるどころか絶望するヤツがほとんどだと思う」
「そうかな……?」
「うん。でも君は,前向きに受け止めた。自分の命を粗末(そまつ)にすることなく,ちゃんと命と向き合って一生懸命に生きてる。なかなかできることじゃないよ」
 絶望して(みずか)ら命を()つ者もいるなかで,彼女は一日一日を大事に生きていたのだ。
「病気と向き合うのは,すごく孤独だと思う。でもな,森嶋。君は一人じゃないから」