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「――森嶋っ! ちょっと待って!」
俺は慌てて廊下に飛び出し,瑠花を追いかけた。後ろには江畑もいた。
「なんで逃げるんだよ……? 森嶋は……何も悪くないだろ……?」
やっとのことで彼女を捕まえた俺は,息も絶え絶えに彼女に言った。
彼女は怒っているのだろうと,俺は思っていた。でも違った。顔を上げた彼女は泣いていた。
……俺が泣かせてしまったんだろうか? そう思うと,俺の胸はチクリと痛んだ。
「ゴメン,森嶋。約束破っちまって。――でも,森嶋だって自分で思ってるんじゃないのか? 『こんな状況,間違ってる』って」
彼女は自分からクラスの仲間達と距離を置くつもりでいたのだと思う。なのにあんな形で孤立するなんて,彼女自身も予想していなかったはずだ。
「…………おんなじだと思ってたの。わたしからみんなと距離を置くのも,みんながわたしを避けるのも,結果はおんなじなんだって。……でも,違ったの。ホントはつらくてたまらなかった。でも,必死に耐えてた」
彼女は泣きながら,俺の問いに答えた。
「ゴメンね,先生,『死ぬのは怖くない』なんて,あんなのウソなの。……わたしやっぱり,死ぬの怖い。もっと生きたい。病気のことで孤立するのもイヤなの。……でも,みんなのこと悲しませたくなくて……」