そこで,江畑が援護射撃をしてくれた。
「アンタ達さあ,瑠花のことハブってるでしょ。あたしが気づいてないとでも思った? ホンっっト最低だよ! 高校三年にもなって恥ずかしくないの!?」
 江畑は本気で(おこ)っていた。多分,俺以上に。――俺も彼女の(いか)りはもっともだと思った。
「俺もそのことは知ってる。江畑の言う通りだよ。俺は担任として,お前らにはガッカリした」
 ここで俺が激昂(げっこう)してはいけないと思い,俺はつとめて落ち着いた口調で言った。
 本当は俺も「お前らは最低な人間だ」と言って,生徒達を冷たく突き放したかった。でも,教師としてはそんなことはしてはいけないのだということも理性では分かっていた。
「もう,森嶋を傷付けるような言動はやめてほしい。頼むよ。たとえ卒業まで一緒にいられなくても,彼女は同じクラスの仲間だろ?」
 俺は生徒達に頭を下げて懇願(こんがん)した。
 我ながら,安っぽい学園ドラマみたいなセリフだと思った。こんなことを自分が言う日が来るなんて……と。
「みんな,分かってんの!? 今度瑠花のこと傷付けたら,あたしとセンセが許さないから!」
「江畑,ありがとな。――じゃあ,今日はこれで終わり! また連休明けにな」
 俺が解散を告げた途端,瑠花が真っ青な顔で教室を飛び出していった。