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 ――そして,その日の終礼時間。
 江畑に目で合図(アイコンタクト)を送られた俺は,教卓をバンッと叩いてから口を開いた。
「ちょっと,みんなに聞いてほしい話があるんだ」
 大型連休に入る前日の終礼ということで浮かれていた生徒達は,俺のいつになく真剣な表情を見て(さわ)ぐのをピタリとやめた。
「……実は,森嶋のことなんだけど。――もういいかな,森嶋? みんなに話しても」
 俺は瑠花本人に確認を取ったが,彼女からの返事はなかった。
 それでもいいと,俺は構わずに話し始めた。
「彼女は今,大きな脳腫瘍に冒されてる。命に関わる大病だ。……もう,残された時間は半年もない」
 ここまでの話を聞いた江畑を除く生徒達は,にわかにザワついた。そして瑠花の表情は強張(こわば)っていた。
 彼女にしてみれば,「"言わないで"って言ったのに!」という気持ちだったのだろう。……その気持ちは俺にも分かっていたけれど,これも彼女を守るためだと,俺は腹を括った。
「森嶋がよく授業を休んだり,途中で抜けたりしてるのは,先生方が彼女の体調面を考慮してくれてるからだ。特別扱いされてるわけじゃない。そこは勘違いしてほしくない」