俺がそう言った途端,彼女の表情が曇った。
「ごめん。余計なことをしたのは分かってるよ。……でも俺は,君がクラスで孤立するところは見たくない。江畑だって,きっと」
「わたしなら大丈夫。孤立したっていいの。どうせ死んじゃったら,みんなわたしのことなんか忘れるよ。だから,みんなには話してほしくない」
 気丈に振る舞ってはいても,彼女も本当はきっとつらかったと思う。強がっても声が震えていたのが何よりの証拠だ。
「……森嶋? もしかして君も,ホントは死ぬの怖いんじゃ――」
「ごめん。先に行くね」
 瑠花は俺が言いかけたことを途中で遮り,怒ったように速足(はやあし)で行ってしまった。
 後に分かったことだけれど,あれは図星だったようだ。彼女は強くなんかなかった。人知れず,迫ってくる死への恐怖と必死に(たたか)っていたのだ。

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 ――俺と江畑が恐れていた事態が起こったのは,それから三日後のことだった。
 その日の昼休みに,俺は異変を感じた。教室で昼食を摂っていたのは瑠花と江畑の二人だけ。彼女には江畑以外にも友達が数人いたのに,瑠花は親友の江畑以外の友人から距離を置かれているようだった。