「先ほども言った通り,森嶋はいつ病状が悪化するか分かりません。そこで,彼女の授業の出欠に関して配慮をお願いしたいんです」
「配慮……ですか。例えばどんな?」
 西本先生の質問に,俺は少し悩んだ。具体的なことまでは考えていなかったのだ。
「そうだなあ……。授業中に具合が悪そうだと思ったら,すぐに保健室に連れて行くなり,早退させるなりして頂くとか。とにかく,彼女の様子を注意深く見ていてやってほしいんです」
「はあ」
「あと,ここからが大事なんですけど。他の生徒に誤解されないように,彼女を特別扱いしていると見られないように気をつけてほしいんです。彼女の病気のことは,まだ生徒達に話していないので」
 江畑にも言われた通り,彼女には決してクラスで孤立してほしくない。――もちろん,万が一そうなってしまった時には,俺と江畑で彼女を守るつもりでいたけれど。
「難しいお願いだってことは,僕も重々(じゅうじゅう)承知(しょうち)してます。ですけど――」
「分かりました。他の先生方には,私から話しておきましょう」
 俺の熱意に押されたのか,それとも瑠花のことを(おもんばか)ってのことなのか。西本先生は了承してくれた。