「"精一杯生きる!"がたった一つの進路なんて……」
 いつもは底抜けに明るい江畑が,それを目にした途端に泣き出しそうな顔をした。
「……ごめん。何て言っていいか分かんない。『見せて』って言ったのあたしだけど,見ない方がよかったかも」
「だろうな」
 江畑でなくても,こんなものを見せられたら言葉を失うだろう。……俺だって,瑠花の本当の夢を知っていなければ同じだったと思う。
「けどな,森嶋がホントに進みたかった進路なら,俺は知ってるよ」
「えっ,マジで?」
「マジっす。一昨日,俺だけに話してくれたんだ」
 これは恋人の特権だったのだろうか。彼女が俺だけに話してくれたことが,何だか秘密を共有しているような感じがして俺は嬉しかった。
「彼女な,教師になりたかったんだって。だからもし病気になってなかったら,大学に進学するつもりでいたらしいよ」
「へえ,教師か……。瑠花らしいね」
 真面目で思いやりがあって優しくて……。彼女ならきっと,いい教師になっていただろうに。
 彼女を亡くした損失は大きい。……大げさじゃなく,本当に。