――ここに，一枚の台紙付きの写真がある。
　白いタキシード姿でぎこちなく微笑(ほほえ)む俺(おれ)――木下(きのした)恵吾(けいご)の隣(とな)りで満面の笑みを浮かべるウェディングドレス姿の少女が写(うつ)っている，一見(いっけん)するとごく普通の結婚写真。
　でも，彼女はもう，この世にいない。半年間だけ俺と愛し合い，十八歳(さい)の若さでこの世を去った"彼女"――森嶋(もりしま)瑠花(るか)は，高校教諭である俺の教え子だった。
　瑠花は大学受験も就職活動もできずに死んでいったが，彼女の同級生達は三月にめでたくこの高校を巣立っていった。今は亡(な)き森嶋瑠花の想いを背負って。
　彼女の死をまだ受け止められないまま，もう半年が過ぎてしまった。もうすぐ，彼女から衝撃(しょうげき)の告白を受けて一年が経(た)とうとしている。
　そんな瑠花と俺との恋の始まりは，ちょうど一年前の春だった――。