3年前の7月。

あの日は、とても暑い日だった。

日も暮れた放課後の体育館で、私と真悟は、マンツーマンでバスケの居残り練習をしていた。

日が暮れても、ムッとするような昼間の熱気が肌にまとわりついて、タダでさえ練習で汗だくな私達を一層熱くしていく。

ダン、ダン、ダン!

二人だけしかいない静かな体育館に、ボールのドリブルの音が響き渡る。

キュッ、キュッ、と鳴る運動靴。

飛び散る汗。

はあはあと、息が上がる。

苦しい。

でも、風を切ってガードを抜けていく瞬間が好き。

ポーン、と放ったボールが、ゴールポストに吸い込まれていく、あの瞬間が大好き。

「じゃあ、最後に時間制限5分1本勝負いこうか!」

息を弾ませながら言う真悟の提案に、私は「了解!」と元気に答えを返した。

それは、いつもと変わらない練習風景の筈だったのに――。

ゴール際。

真悟のガードを交わして、低い位置からシュート体勢に入った私の右足が、ズルリと、床に飛び散っていた汗に滑った。

きゃ!?

世界が、スローモーションで回転する。

頭から落ちる!?

そう本能で直感した瞬間、私の中で何かがはじけ飛んだ。

熱い。熱い。熱い。熱いっ!

体中に駆け巡る膨大なエネルギーに翻弄されて我に返ったとき、私の目に映ったのは、床に散乱する破壊し尽くされたゴールポストと、私を庇ってその下敷きになっている真悟の姿だった。

重い鉄パイプの下で広がる、鮮やかな赤――。

救急車で運ばれた真悟の手術中、私は迎えに来た父から、自分の『生まれ持った力』に付いて聞かされた。

「え? 今なんて言ったの、お父さん?」

父の言葉が飲み込めずに、私は聞き返した。

「お前は、遺伝的な超能力者なんだ」

馬鹿馬鹿しいと否定する心の奥底で、父の言葉に偽りが無いことを私は理解していた。

あれは、私がやったのだ。

ごめんね。

ごめんなさい。

謝っても、謝りきれない。

真悟は『歩けなくなるかもしれない』と言うほどの、重傷だった。

だから、私は金輪際、今後一生、バスケットをやらないと、固く心に誓ったのだ。