その光景をぼーっと眺めていると
頭の上にぽん、と手が乗った。







「 俺らが、連れてったる 」



「 え? どこに? 」







不意打ちで乗せられた手にびっくりしながら聞き返すと、そいつは大きな声で笑いだした。







「 なんや面白いなあ、紀国は 」







このくだりやってその返しは天才や、とお腹を抱えて笑っている。



何よ失礼ね、と言い返そうとすると
また頭の上にたしなめるように手を乗せられた。







「 決まってるやろ? 」







甲子園や、と黒い肌と対照的な
白い歯を見せて笑う。



その瞬間に主将が集合の合図を出した。



そいつは慌てて帽子をかぶり、グラウンドにかけて行く。







「 ……もちろん 」







お父さんに言われた言葉。



その言葉は今でも私の胸に強く残っている。







『 ___女の子はな、太陽や。
  選手っていう花を咲かせる太陽なんや 』







グラウンドから選手が私を呼ぶ声が聞こえる。



はーい只今、と返事をして
灼熱のグラウンドに飛び出した。







『 ……せやから、野球を諦める必要なんてない。
  太陽になれ、珠々花 』







空は、今日も青空だ。





背番号21 / ** END