『 珠々花、女の子はな___ 』







高校に入学する時、お父さんに言われたことを思い出す。





小学校を卒業してリトルリーグを辞めた後も、
私はどうしても野球が諦めきれなかった。





そして中学でも野球部に入ることを選んだ。





___でも、入学した高校の野球部では
女子は選手として入ることが許されなかった。



……女子というだけで。





だから。



私は、マネージャーとして野球部を支えることに決めたんだ。







「 ……くに、きーのーくーに? 」



「 ……へ? 」



「 へ? やなくてほ? でもないわ!
  さっきから見てればずーっと上の空やから、どーしたんかと思ったんや 」







誰かと思えば、同級生の選手だった。



先輩がたくさんいる中で
たった1人、レギュラーを勝ち取った1年生。







「 えへへ、ごめんごめん。
  ちょっと考え事してたんだ 」



「 ほんならいーけどなー 」







休憩中の部室内は騒々しい。



騒々しい部室の中に、主将の" あと2分ー "というよく通る声が響き渡る。



すると、あんなに騒がしかったのが嘘のように
みんな真剣な顔をしてグラウンドに出ていく。