「ねえ、勝手にこんなことして大丈夫なのかな?」

「大丈夫ですよ。宍戸はよくやっていましたし」

透と美咲はその夜、感染症研究センターに忍び込んでいた。警察に通報されてしまえば間違いなく逮捕されるだろう。しかし、村田刑事の捜査を待っている間に玲奈の身に何が起こるかもしれない。そう思うと止められなかったのだ。

なるべく足音を立てないようにして、透と美咲は歩いていく。透が小声で言った。

「倉木は個人の部屋以外なら探してもいいと言っていた。つまり、宍戸は個人の部屋に監禁されている可能性が高い!」

「おお、名推理じゃん!名探偵だね」

美咲の顔に久々に笑顔がある。透はそれにホッとしながら廊下を歩いていた。

「玲奈さ……」

美咲が立ち止まり、口を開く。透も立ち止まって美咲の方を見た。美咲は優しく微笑んでいる。

「無表情で変わり者だけど、すごくいい人なんだ。助けようと決めたら必ず助けようとする。そして、救えなかったらずっと心の奥底で後悔し続ける。……そんな人だよ」