蘭はしゃがみ込んで、ガタガタと震えだした。
「蘭?」
私もしゃがみ込んで、蘭に触れようとする。
「触んな」
下を向いて震えていた蘭が。
私の手を払いのけた。

「気持ち悪い…触んな」

その場が静寂に包まれた。
時間が止まったかのように感じた。
聞き違いだったら、どんなに良かっただろうか。
でも。残念なことに蘭は声が大きい。
はっきりとキモチワルイという単語が耳に残った。

私は立ち上がると。
すぅと鼻から空気を吸い込んだ。

「蘭なんて大嫌い!」

しゃがみ込んでいる蘭の頭に向けて言うと。
その場をダッシュで走り去る。
「カレンさんっ」
後ろからシュロさんの声が聞こえてきたけど。
そんなのどうだっていい。

走れ、自分。