その日は、休日で。
私は、食堂で朝食を食べていた。
パンケーキを運んできたシュロさんは「どうぞ」と言ってテーブルにお皿を置いた後。
じっと私を見た。
「蘭が結婚なんてねぇ…」
感慨深そうに言う。
「もう、シュロは用が済んだらあっち行ってて」
イライラしたように、後ろに立っていたサクラさんが言った。

パンケーキを食べていると。
いきなり、扉が乱暴に開いて。
「おいっ、カレン」
と大声で誰かが入ってくる。

ビックリして身体が震えた後。
声のするほうを見ると。
やっぱり蘭だ。
食堂で、蘭に会うのは初めてだった。
「おい、今から俺と出かけるぞ」
「はい?」
3日ぶりに会ったかと思えば、この男はいきなり何を言うのだろうか。
3日前に会ったときは、いつものように「俺は忙しいんだ」と言ってすぐに姿を消したのに。
今日は、私の前に立ったまま動かない。
「お出かけ…ですか?」
「さっさと食べて、支度しろ。おいっ、シュロ」
そう言うと。
蘭は厨房の方へ行ってしまう。

「あら、デート? カレン。支度しましょう」
「…え」
サクラさんは、にんまりと笑う。
デートという最悪の言葉に再び身体をぞわりと震わせてしまう。
蘭は厨房でシュロさんと何か会話した後、こっちへ戻ってきた。
「おいっ、サクラ。コイツには俺の服貸してやるから、動きやすい格好をさせろ」
そう言って、蘭は大急ぎで出て行った。
「なによ、アイツ。デートなんだから、お洒落させろってーの」
と、毒を吐くサクラさんだけど。どこか嬉しそうだ。顔がニヤニヤしている。
私は、一瞬にして食欲がなくなり、憂鬱モードへと突入したのだった。