「なんかむかつく」
「あっ、海翔くん照れてる」



自分の顔を隠すようにわたしの胸に顔をうずめてきて、誰かが通りかかったらどうするの、と思ったけど、平常心よりも海翔くんの可愛さが勝ってしまった。

茶色がかかったサラサラの髪に触れると、「ふ、ゆちゃん」と言いながら甘えてくる。



「だからあんなに怒ってたの?」
「だってむかつくから。芙結ちゃんが男と話すとか、告白されるとか、すごい嫌だ」

「うん」
「遊びとか好きじゃないとか。勝手に決めつけられるし。しかも否定されてたなんて知らないし」





拗ねたように言葉を発している海翔くんは可愛くて、さっきの顔はもうどこにもなくて、こどもみたいにつらつら言葉を並べている。

これがいつもの話し方だけど、いつもみたいにわたしをからかう海翔くんはいない。