海翔くんの思いを聞いたことがあまりないからほんとうのことはよくわかっていないけど、わたしはすきだから付き合っているし、すきになるのに理由はいらないと思う。



「うん」って返そうとしたとき、「なにそれ?勝手に決めつけないでくれる?」とさっきまで聞こえなかった低い声がわたしの耳に届いたけど、振り向かなくてもわかる。

腕を思いっきり引っ張られてバランスを崩したわたしは海翔くんの胸にすっぽりとはまった。



いつもの匂い、思ったよりも広い胸がすぐ近くにあって、心臓が高鳴りしている。



「ねぇ、何してるの?おれの芙結と話さないで。しかも、いろいろ勝手に決めつけてるけど誰に聞いたの?」



いつもは話すのも遅いくせに、今日は早口だから、すこし驚いているわたしは不機嫌そうに相手を睨みつける海翔くんをじっと見つめる。