家族となってからはより親密な関係になるのに時間はいらなかった。

毎日、4人で朝と夜食事を共にし、ティータイムにはカルロティーと共にした。

そして、毎日休みなくレッスンを続け、今日は午前中に最終試験、午後は編み貯めたレースをドレスにつけてウェディングドレスを完成させる予定である。

「どうしよう、リンネ。
朝食の時に大丈夫ってヴァルテリ様から励まされたけど、できなかったら…」

髪結いの最中、アイリーンはいつもに増して不安で心がいっぱいだった。

「アイリーン様、リンネはいつも夜遅くまで勉強している姿を見てきました。
それに、日々の試験も毎回9割以上取っているではありませんか。

アイリーン様、今日は張り切って髪を結ばせていただきました。
そして今日着ているドレスはヴァルテリ様からいただいたもの、髪飾りは王妃様が王太子妃だったころにつけていたもの。
アイリーン様は一人ではありません。だから、きっと大丈夫です!」

リンネの言うとおり、今日はいつもの簡単な編みこみではなく、少し時間をかけた髪型で、ドレスも髪飾りももらったもの。
試験中、部屋にはアイリーンとティーナ伯爵夫人以外は入れないが、少しでも役に立てばという思いで身に着けているものだった。

「うん、ありがとう。
私、頑張ってくるからリンネも応援してね。」

「もちろんですとも。
リンネは何があってもアイリーン様の味方です。」

試験の為、部屋を出ると廊下にヴァルテリが待っていた。

「緊張しているだろうから、部屋の前まで一緒に行こう。」

そういってアイリーンの手を握り、ゆっくりと歩き出した。

試験の行われる部屋まではそこまで遠くはなかったのだが、いつもよりもゆっくり歩いたため、遠いように感じた。

「試験が終わるまでここで待っているから、頑張ってこい。」

言い終わるとヴァルテリはアイリーンの口にキスをした。

「ヴァ、ヴァルテリ様…」

「どうだ、試験の緊張は解けただろう?」

「で、でも、心臓がすごくバクバクしてて試験に集中できないかもしれないです…」

「大丈夫、アイリーンなら大丈夫。
今まで頑張ってきたものをすべて試験にぶつければいいのだから。」

ヴァルテリは最後にアイリーンのことを軽く抱きしめると部屋の扉を開け、アイリーンに中に入るように促した。