すでに二人は食事室におり、アイリーンたちが食事室に入ったときは何か話していた。

「本日はお招きありがとうございます、ルーメンティー国王陛下、カルロティー陛下。
キャンベル大公家ニコラス・キャンベルの長女、アイリーン・キャンベルでございます。」

「アイリーン、よく来た。
今日は身内のみの晩餐会だ、堅苦しい挨拶はなしで大丈夫だぞ。」

「ありがとうございます、陛下。」

アイリーンとヴァルテリが着席すると、ルーメンティーは合図を出し、晩餐会がスタートした。

「今日は晩餐会のホストとしての役割も教わったそうだな、アイリーン。
不思議に思っただろう?ロッティーではなく私が合図を出したから。」

その言葉にアイリーンはただただうなずいた。

「王室主催の晩餐会だと出席者が多いから、男性がホストを務めるんだ。
キャンベル大公家も出席者が多いから男性がホストを務めていると思っていたが、違ったみたいな。

ちなみにロッティーは代わりに婦人たちの交流を深めるためのお茶会のホストを務めている。
お茶会のマナーに関しては後でロッティーが教えることになると思うから焦らなくて大丈夫だ。

先に伝えていなくて申し訳ない。」

まさかのアイリーンに向かってルーメンティーが頭を下げたので、アイリーンは困り、そのまま固まってしまった。

「あなた、アイリーンが困っているからやめてあげて。
かわいい私の娘を困らせたら、国王であっても許さないからね。」

次に王妃から私の娘と言われたアイリーンは顔を真っ赤にさせ、それを隠すためうつむいてしまった。

「父上、母上、あまりアイリーンを困らせないでください。
アイリーンは両親や弟と離れてまで来てくれたのですから。

アイリーン、大丈夫?
父上も母上も娘が欲しかったらしくて、アイリーンが来てくれたことを喜んでいるんだよ。」

「そうそう、だから私のことはお父さんって呼んでくれてもいいんだぞ?
ロッティーのことはお母さんって。」

「だーかーら!
変なことを言わないでください、父上!」

このやり取りのおかげなのかアイリーンは落ち着きを取り戻し、顔をあげた。

「いいんです、ヴァルテリ様。
私、最初は少し恥ずかしかったけれど、家族になれるんだって思うとすごくうれしくて。

戸惑ってしまってうつむいてしまったけれど、やっぱりうれしさのほうが大きかったんです。

これからもよろしくお願いいたします、お父さま、お母さま。」


今はまだ、婚約者であって家族ではない。
失礼のないように接しなければ。

そう不安に思っていた気持ちはすぐにどこかへ消えていった。