そして昼食の時間。
アイリーンとティーナ伯爵夫人は部屋を移動し、食事室へとやってきた。

この食事室は王族の食事をする場所となっているが、国王や皇太子は職務の間に軽食を食べるだけ、王妃は昼食を食べずにお茶の時間に少し多めにお菓子をつまむのが日課となっているので、昼食時にこの部屋を使うものはいなかった。

「それではレッスンを始めます。

アイリーン様、本日はようこそわが屋敷の晩餐会にお越しくださいました。
短い時間ではありますが、アイリーン様にとって心地よい時間になるよう、努めますので、どうぞよろしくお願いいたします。」

アイリーンとティーナ伯爵夫人が席に着くと、ティーナ伯爵夫人は給仕係に合図を出し、その後食事が運ばれてきた。

「本日の料理は魚の香草焼きをメインとした料理を用意させていただきました。

また、お飲み物はあっさりとした飲み口のハーブ水を用意いたしました。

どうぞ、お召し上がりください。」

「ありがとうございます。」

そしてふたりは食事を始めた。

食事の最中もホストであるティーナ伯爵夫人は客人であるアイリーンに気を使い、出されたものに嫌いなものはないかなど食事の邪魔にならない程度に尋ねていった。

そして、メインの料理を食べ終わり、デザートが出された際、ヴァイオリンを持った人が数名入ってきて静かに生演奏を始めた。

これにはアイリーンも驚き、デザートを食べる手を止めてしまった。

「アイリーン様はゆったりとした曲調の音楽を好まれるとお聞きしたのですが、どうでしょうか?」

「ええ、とても素敵な音楽です。
客人のことをここまでもてなすことができるティーナ伯爵夫人は本当にすごいです。」

「晩餐会に来た客人をもてなすためのコツはいくつかあります。
客人が好む料理を提供すること。複数人の客人がいる場合は絶対に嫌いな食べ物を入れないこと。
今回みたいにサプライズを用意することもいいと思いますよ。
その場合は客人の好きなものか、万人受けするものを選ぶこと。
そして一番重要なことは常に客人に気を配ること。

これらが完璧にできればホストとしては完璧です。」

「ありがとうございます。
私なりにも何かできることはないか考えてみます。」

デザートも食べ終わり、ティーナ伯爵夫人は最後にアイリーンに微笑み、昼食は終わった。