『ねぇ、教科書見せて?』
「ねぇ、何回目??」
『ん~ん、3回目??』
「5回目!!」
『えっ!?俺そんなに忘れてる??』
「うん、そんなに忘れてるよ?」
『次は絶対持ってくるから!』
「そのセリフも5回目。」
『いやそれは盛りすぎでしょ!?』
〈おい!!そこ、うるせーぞ!〉
『先生聞いてよ!こいつが教科書見せてくんねーの!』
「ちょっ!違います!!」
〈はぁ、これで注意するの何回目だと思ってるんだ?授業中は無駄なお喋りは止めましょって小学生でも知ってるぞ。そうだ…なぁ、お前ら連帯責任って知ってるか??〉
……嫌な予感がする。
『知ってるよ!俺そんなバカじゃないよ!!』
〈おっ、シンタ意味はなんだ?〉
『みんな巻き添え〜だろ?』
〈言い方に問題はあるが、そんな感じだ。ということで。お前ら授業中うるさくした罰として今日の放課後2人で先生のパシリな。〉
…ほーら、嫌な予感的中。
「なんで私まで!?」
『だから、連帯責任だって!』
〈その通り!〉
「誰のせいだと思ってんの?!」
『だから、誰のせいとかじゃなくて連帯責任。ねぇ!先生!』
〈その通り!〉
はい、最悪~
ーーーーーーーーーー
『なんで怒ってんの??』
授業が終わってからも
不機嫌な私を不思議そうに覗いてくる。
「あの事以外に理由があるとお考えですか?」
『あの時にパって教科書見せてくれたらよかった話じゃん!』
「ケンカ売ってんの??」
〈お前らうるせーって!夫婦喧嘩は教室の外でやれよ!〉
クラスの男子が笑いながら私たちを茶化す。
「誰が夫婦じゃい!!」
『えっ!!俺たち夫婦じゃなかったの?』
「もう!!ふざけないでよ!」
いつもそう。
私が先生に怒られるときは
いつもシンタが絡んでいる。
シンタとは高校から一緒で仲良くなった。
なぜか入学してから何回も席が隣になるから
仲良くならないわけないか…。
シンタは人気者って言葉が似あう人。
誰とでもすぐに仲良くなれるし、
誰にでも優しい。
普段おちゃらけてるから隠れてるけど、
よく見ると顔もスタイルもいいから、
隠れファンがたくさんいるらしい。
「はぁ、」
机に突っ伏する。
さっきまで隣にいたはずのシンタは
廊下で友達とふざけてる。
「いつの間に廊下に…。」
〈ねぇ、あんたたちいつ付き合うの?あっ、それとももう付き合ってるとか?〉
「付き合ってない!!」
なんてふざけて聞いてくる
おんなじグループの友達。
〈あんなに仲いいのに??〉
「仲がいいからと言って付き合ってるとは限らないの。そもそも私のタイプはリードしてくれて頼れる人だから!」
〈あ~あ、シンタ残念。教科書忘れてるうちは無理だね。〉
「残念ってどういうこと??」
〈んにゃ、なんでもない。〉
「あっ!しまった!」
〈びっくりした!!どしたの??〉
「今日は弟のお迎えに行かなきゃいけないんだった~!」
〈そういえば今日、火曜日だったね。〉
「あーーーーー。もう。ほんとに最悪。」
〈早く終わらせても駅までダッシュ決定だね。〉
毎週火曜日は両親の仕事の関係で
私が学校帰りに弟を保育園に
迎えに行かないといけない。
弟は2歳で高1の私と14歳も離れている。
ずっと一人っ子だった私は
弟がかわいくてしょうがない…。
〈弟君、元気??〉
「うん!!最近さ自分で靴はけるようになったの!苦戦しながら頑張ってる姿が可愛すぎて、思わず動画撮っちゃった!!見て見て!!」
〈はいはい。相変わらずブラコン爆発だね。〉
って苦笑いしながら毎回弟の話をこうやって
最後まで聞いてくれる友達には頭が上がらない。
「はぁ、早く会いたいな~。」
『おっ!呼んだ??』
「はいっ!?どうして私がシンタを呼ばなきゃいけないの?」
『そんな怒んなって!早く会いたいってお前が言うから俺のこと恋しくなったのかなぁ~って。』
「なんで私がシンタに会いたいわけ?!なんなら今、一番会いたくないわ!」
『え、シンタの心が痛いって言ってる…。』
うぅっ!って胸に手を当て崩れるシンタ。
「なんでいつもふざけてるのに勉強はできちゃうんだろうね、シンタ。私の中の世界3大ミステリーだわ。」
『なんだそれ!失礼しちゃう!!』
こんなシンタだけど、勉強はできる。
いや、シンタはなんでもできる。
そこが隠れファンが多い
理由の一つだったりする。
〈シンタってなんでもできちゃうよね~。〉
シンタが席を外すと友達がボソッと呟いた。
「そこがまたムカつく。」
〈はいはい。〉