オレが何を答えるのか興味津々な感じの葵は大きな目をパチッと見開いてオレの顔を見続けた。


「う~ん……」


「なになに隼翔、どんなことが一番思い出に残ってるの?」


 葵は、さらに身を乗り出して訊いた。


「う~ん……」


 本当は高校生活の中で何が一番思い出に残っているのかオレの中では最初から決まっていた。

 でも葵の純粋な眼差しで身を乗り出して訊く姿が、あまりにもかわいくて、つい少しだけ考えているフリをしてしまっている。


「隼翔」


 かわいく訊く、葵。


「う~ん……」


 もう少し考えているフリをしている、オレ。


「隼翔」


 早く答えを知りたがっている様子が、むちゃくちゃかわいい、葵。


「う~ん……」


 もう少し粘る、オレ。


「隼翔‼」


 ……そろそろかな。


 オレは葵をじっと見つめ……。


 ……そして……葵にキスをした……。


「隼翔……」


「これが答え」


 オレの高校生活の中で一番の思い出は葵と恋人同士になれたこと。


「隼翔……」


 葵は、ぎゅっとオレに抱きついた。


 オレも葵のことを抱きしめた。