あのとき……オレはもう、遼祐と普通に話すことすらできなくなるのではと不安に思ったこともあった。
でも、またこうして遼祐と普通に話すことや遊びに行くことができて本当によかったと思った。
遼祐とは、これからもずっと友達でいたい。
オレは心の底から願った。
「じゃあ、オレはここで」
遼祐がそう言ったのを聞いてオレは、もう遼祐の帰る方向の分かれ道まで歩いてきていたのかと気付いた。
「ああ。じゃあ、また」
オレは遼祐に手を振った。
「じゃあ、また」
遼祐もオレに手を振った。
遼祐と別れた後、少し歩いて家に着いた。
オレは自分の部屋に入って、着替えてから葵の部屋に行った。
「おかえり、隼翔」
いつものやさしい葵の声。
「ただいま、葵」
オレは、やさしく包み込むように迎えてくれた葵をやさしく抱きしめた。
「……会いたかった……葵……」
オレは家で毎日、葵に会っているのに、まるで長いこと会えなかった恋人にやっと会えたかのような、そんなときに使うであろう言葉が自然に出てきた。