「それはそうなんだけど……。じゃあさ、隼翔と遼祐は高校生の間にしておきたいことはないのかよ」
「……しておきたいこと……。いきなり訊かれると、なかなか思い浮かばないな……」
……本当はオレにとっての高校生活に心残りがあって、本当に今はただ思い浮かばないだけなのか……。
いや、そうじゃない。
オレは、オレにとっての高校生活に心残りはないのだと思う。
オレは葵と想いが通じ合うことができた。
オレは葵のことを愛している。
葵もオレのことを愛してくれている。
それだけで充分だ。
「なんで思い浮かばないんだよ」
太一はオレの返答にもの足りない様子だった。
「『なんで』って……」
オレはそれ以上、言葉が出なかった。
「オレは、やり残したことがあるかといえばよくわからないけど、もし高校生活の中でやりきれなかったことがあるとしたら、そのときは大学に行ってからやろうと思う」
「『大学に行ってから』ということは、遼祐、お前も大学に進学希望なのか?」
「ああ。『お前も』ってことは、太一も大学に進学希望なのか?」
「ああ、そのつもり。隼翔、お前は?」
「ああ。オレも大学に行こうと思ってる」